一人目の出会いはY子。プロフの写真は長谷川京子から少し色気を取ったような綺麗めな女性だった。30代後半。身長は160cm。
サイトを始めてから何人かとマッチングして複数人とやりとりをしている中でY子とは他愛もない会話を一週間くらいして雰囲気的に誘えそうだったので飲みに誘ったら3日ほど遅れてオッケーの返事がきた。
お店を予約して駅で待ち合わせをした。しかし時間が過ぎてもY子は現れない。連絡もこない。
やはり自分が思っていた通り、このサイトにはサクラばかりで僕はこの直接話したこともないY子にブッちされたのだろう。段々自分が惨めになり、悔しがっていた矢先、こちらに小走りで一人の女性が走ってきた。僕を見ていたので一発でY子だと確信した。
喜んだのもつかの間、残念ながら写真とはかなり見た目が違っておりどちらかと言えば光浦靖子に色気を加えた感じの女性だった。これはマッチングアプリだということを完全に忘れていた。既婚者だってアプリで写真を加工して自分を綺麗に見せたいのだ。
「遅くなってごめん、写真よりかっこいいね。あと私今日薬飲んでるからお酒飲めないんだー」
謝りはしたが悪びれている感じはせず、むしろ会話からして出会いには慣れてそうだ。しかもしっかりとこっちを警戒してくる。
そのまま一緒に歩きながら居酒屋に向かうが、店に着いて席に通された瞬間に致命的なミスに気付いた。
席の隣との間隔が狭く隣に会話が丸聞こえなのだ。周りの目のこともあるしよく考えたら個室がいいに決まってる。お店は頑張ってお洒落なところを予約したがこれは普通のマッチングアプリの出会いとは違うのだ。
急にとんでもない量の脇汗が出てきた。
どんなトーンで話せばいいか迷ったが、それでも僕は平静を装った。
とりあえずここは他愛もない普通のマッチングアプリのような自己紹介から入ることにした。
「改めて初めまして。ぽちょです。」
「ぽちょね。じゃあぽちょ君と呼ぶね。で、ぽちょ君は奥さんとの関係はどうなの?」
こっちの自己紹介がまだ終わらないのにY子は周りを気にせず普通の家庭の話をし始めた。
僕の心配を他所にY子はよくしゃべる!隣席との距離も気にせず家族の話や不倫をしようと思った理由を話す。こちらが聞いてもいないことを止まらず喋る。
そして気が付いたら両隣の中年サラリーマン二人組とカップルが会話を止めて僕たちの会話に聞き耳をたてている。
会う前にどうやって情報を聞き出そうか考えていたが無用な心配だった。
情報量が多いので簡単にY子について簡単にまとめると以下の内容となった。
Y子は他県から来ており、知り合いがほとんどおらず親や旦那の助けなしで子供を3人育てた。よってそこの部分はかなり自信を持っている。
旦那は現在単身赴任中で子供との4人の生活は旦那がいない状態で成り立っている。だから旦那が帰ってきたときは中途半端に子供の仕事を奪う形で家事の手伝いをされると逆に生活のリズムが狂ってしまいそのことをストレスと感じている。
正直、男側の意見としては家族のために単身赴任までして頑張っている旦那が少し気の毒だった。本人は意図して単身赴任しているわけではないのにと思ったがここでY子にそのこを伝えるともちろん気を悪くするので黙って続きを聞くことにした。
一度彼女が熱を出しているときに、旦那が自分の分だけ晩御飯を買ってきて、「今日はごはん作らなくてもいいよ。これで今日の家事の負担が減ったでしょ?」とどや顔で言ってきてからこの人には何言っても無駄だと思うようになり、諦めて怒らないようにしているが、それもストレスになりそのため旦那が最近家に帰ってくると頭痛がするとのこと。これはかなり末期に近い状況だと思った。
なので旦那がゴルフに行こうが、飲みに行こうが無関心になりもうどうでもいいとのこと。
「昔は旦那とお義父さんとコミュニケーションを頑張ろうとゴルフまで始めたけど、もうゴルフも辞めようかな~」
と言って僕にゴルフ券までくれた。
ただ旦那としてはそのような状況には気づいており、気にもしているので彼女の人生の中に自分も含めて欲しいということをストレートに言ってくる。
ここでも男側の意見としては旦那がそこまで気にしているのであれば黙っていないでストレートに旦那にしてほしいことや改善してほしいことを伝えたらまた旦那も変わってくれるのではないかと思ったが僕の立場で彼女に何を言おうが意味はないのだろう。
不倫をしようと思った決め手は自分の実家に旦那と帰省したときに父親の前で自分に対する不満を旦那に言われ、「今日は酒が進むな~」と止めの一発を刺されたことにより彼女は号泣してしまい、そのまま実家を飛び出した。
そこから自分の人生はこのままでいいのかと思い悩むようになり。とうとうセカンドパートナーを探す決意をしてサイトに登録したとのこと。
ついでに補足しておくが、なぜかこのサイトではみんな女性側は不倫相手と言わずにセカンドパートナーと呼んでいる。そう呼んだ方が自分の罪悪感がなくなるのだろうか・・・
また、性の事情については旦那は太っており、そのため太っている人とはセックスはしたくないとのこと。旦那にはもう近づきたくないから1年以上レスが続いている。
Y子と話してみて旦那とは関係は崩壊しており、修復は難しいような状態ではないかと思ったと同時にY子もこの状況が危ないことは理解しておりただどうしようもないから誰かにとりあえず話を聞いてもらいたいのだろうと思った。
実際、Y子とも話していて
「こういう話は身近な人にはできないね。かと言って知らない人も全然理解してくれないし、既婚者同士の適度な距離感の人に一番話せるよね」
という話になった。
結局3時間ぐらい話して、Y子は家事があるから少し暗い夜道を散歩して解散するすることにした。
初めての出会いは久しぶりのマッチングアプリ&不倫ということもありかなり緊張したが、その反面今までの普通のマッチングアプリとは全く違う背景で女性が登録しており面白かった。
次回への反省点は個室を予約すること。